第 67 回(東京)・第 68 回(大阪)
スガウェザリング学術講演会

「屋外暴露と促進試験」をテーマに、今年も様々な業界の方々を講師にお招きし講演会を開催いたしました。 東京講演・大阪講演あわせ380名以上の方々にご参加頂き、盛況のうちに無事終了することができました。ご聴講頂いた皆様、講師の先生方、並びに役員をはじめご尽力頂きました多くの皆様に厚く感謝し、深く御礼申し上げます。これからもウェザリング技術にたずさわる皆様のお役に立つ情報を発信し続けて参りますので、ご支援の程よろしくお願い致します。

開催日 時 2018年10月25日(木) 10:00~16:45 (東京)
2018年10月30日(火) 10:00~16:45 (大阪)
場 所 アルカディア市ヶ谷 3階富士の間 (東京) 
大阪国際会議場(グランキューブ大阪) 12階特別会議場(大阪)
テ ー マ 屋外暴露と促進試験
後 援 文部科学省
協 賛 (一社)軽金属製品協会(公社)高分子学会(一社)色材協会
(公社)自動車技術会 (一財)日本ウエザリングテストセンター
(一社)日本建築学会 日本建築仕上学会
(一社)日本ゴム協会(一社)日本塗料工業会 
  日本プラスチック工業連盟 (一社)日本防錆技術協会
(一社)表面技術協会(公社)腐食防食学会 スガ試験機(株)
主 催 (公財)スガウェザリング技術振興財団

開会のご挨拶

須賀茂雄

須賀茂雄スガウェザリング技術振興財団 理事長 
伊藤 叡

伊藤 叡スガウェザリング技術振興財団 評議員
本日はお忙しい中、参加登録を頂き、誠にありがとうございます。ここにご参集の皆様に、敬意を表し、改めて感謝を申し上げます。 さて、最近、「ウェザリング研究」の大切さを、身をもって再認識した出来事がありましたので、少しご紹介させて頂きます。今年はじめに、私は新宿のスガ試験機の本社社屋を新しく建て替えました。実は竣工して間もなく、ウェザリングが原因で予期せぬ劣化が発生しました。想定外の劣化ということで、その原因はなかなかつかめませんでした。原因の特定までには多く時間を要し、ユーザー側の不安な気持ちを身をもって体験いたしました。製造者が万全だとしてもなお、予期せぬ劣化は様々な環境下で日々発生しています。先代が「ウェザリング技術は永遠のテーマである」とよく申していたことを思い出し、改めて日々の絶え間ない「ウェザリング研究」が重要であると再認識いたしました。 最近、「情報と知性」という文書を目にしました。 「現代は、インターネットで論文や特許などいつでもダウンロードでき、多くの情報を得ることができる時代になったが、その情報は単なる知識に過ぎず、その知識は研究開発者の「想い」を持って深く考えることで、はじめて知恵となり、その知恵の積み重ねが知性につながり、その知性は研究開発の強みの素となる…」とありました。本日、ここに足を運んでいらっしゃった皆様は、講演者が何を伝えようとしているかを自ら見極めに来られた方々です。今日の講演会で得た情報を、想いを持って深く考え、自らの知恵とされようとする方々です。冒頭で、「この会場にお運び頂いた皆様に敬意を表します」と申し上げましたのは、 そのためです。 今回より、当財団の研究助成を受けられた研究者による研究成果の報告をプログラムに加えさせて頂きました。 有意義な1日となりますよう祈念して、私の開会の挨拶とさせていただきます。

講演内容〔東京・大阪〕

奥田 章子株式会社大林組 技術本部 技術研究所 生産技術研究部 主任研究員(課長)

環境配慮形粉体塗装および完全艶消し塗装「艶シャットコ-ト」の性能評価

近年VOC(揮発性有機化合物)を排出しない環境配慮形の粉体塗装が注目されており、国内実績も除々に増加しつつある。ここでは、各種粉体塗装について、促進耐候性試験および屋外暴露試験を実施し、双方の試験結果の相関性を検討するとともに、塗膜劣化機構について考察した結果を紹介した。また、トピックスとして、あらたに開発した全く艶のないマット調の、意匠性に優れた「艶シャットコ-ト」について、その概要と性能評価結果を紹介した。

大谷 良行株式会社UACJ R&Dセンター 第二研究部 分析化学研究室 室長

アルミニウムの遮蔽暴露試験の促進因子

アルミニウムは、表面に形成される自然酸化皮膜の効果により通常の大気暴露環境において高い耐食性を示す。一方、遮蔽暴露環境においては、アルミニウムに深い孔食が発生することがある。本報告では、遮蔽暴露環境におけるアルミニウムの腐食促進因子を明らかにし、これ適用した中性塩化物環境の腐食促進試験について報告した。

早川 泰弘東京文化財研究所 保存科学研究センター 副センター長

日本絵画に用いられる彩色材料の多様性と変遷 ― 高松塚古墳壁画から伊藤若冲まで ―

日本絵画で使われる彩色材料は時代とともに変化してきた。白色顔料は室町時代から江戸時代初期に、鉛白から胡粉への大転換が起きていたことが明らかになった。緑色顔料は緑青の中にいくつかのバリエーションがあることがわかってきた。200作品以上の日本絵画の調査によって明らかになった彩色材料の多様性と変遷について発表した。

飯山 忠明公益社団法人自動車技術会 高電圧部品耐環境試験法分科会
日産自動車株式会社パワートレイン・EVコンポーネント開発部 主担

電動車用耐環境試験法国際規格 (新規制定)の概要

EV・HEV等に搭載するモータ・インバータ等を対象とし、環境負荷試験の実施方法を定める国際規格ISO 19453が新たに制定された。本規格は電動車両技術で世界をリードする日本が発議し、従来から広く用いられてきた12/24V系規格ISO 16750のコンセプトを踏襲しつつ、高電圧部品への適用を図ったものである。一般・機械負荷・気候負荷・化学負荷の4パートで構成される本規格の概要について、関連規格との関係等もまじえて解説した。

講演内容〔大阪〕

渡辺 真スガウェザリング技術振興財団 耐候研究委員会

特徴ある地球環境に曝されたプラスチックの劣化事象から ― 地球環境の多様性を考える ―

今日のグローバル経済の発展に伴い、製品・材料は、世界各地の様々な環境下に曝されており、劣化に関わる光・温度・湿度・濡れに対する耐候性の対応が益々複雑になっている。今回、東京、鹿児島、沖縄、アリゾナ、南フロリダの5 地域に於いて暴露試験を実施し、プラスチックの劣化の特徴をまとめた。更に、各地の環境因子を数値化し、促進耐候性試験結果との関係性を考察し報告した。

喜多 英雄スガウェザリング技術振興財団 耐候研究委員会

分光老化試験の国際標準化とLED耐候劣化研究への応用

ISO/TC61/SC6(プラスチック/老化)で規格作成段階の分光老化試験方法について、原理、装置の概要、代表的な樹脂での試験結果を解説した。また、画像出力された印刷物を用いて分光老化試験を実施し、得られた分光劣化特性から、最近室内光として多用されているLED光源の分光分布の影響について考察した。本研究は当財団のLED耐候劣化研究分科会によるもので、今回の報告が第一報となった。

研究助成成果報告内容〔東京・大阪〕

紺野 晃弘一般社団法人日本マグネシウム協会 技術研究委員会 表面処理分科会
一般財団法人日本ウエザリングテストセンター 東京本部事務局

マグネシウム合金板材の暴露試験と塩乾湿複合サイクル試験の相関に関する調査

マグネシウム合金板材の耐食性データを整備するために行った、暴露試験と塩乾湿複合サイクル試験との相関性に関する調査の結果を報告した。

研究助成成果報告内容〔東京〕

安住 和久北海道大学大学院 工学研究院応用化学部門 電子材料化学研究室 教授

寒冷地における積雪下暴露金属試験片の詳細腐食モニタリング

寒冷地積雪下での金属腐食を詳細に調査するため、腐食および環境モニタリング装置を開発し、実際に鋼板、鉄線、亜鉛箔の冬季間暴露試験を行った。例えば直射下の鋼板温度は氷点下でも数十度に達して雪を溶解し腐食を引き起こした。

小林 弘明あいち産業科学技術総合センター 産業技術センター 金属材料室 主任

微粒子ピーニング処理と大気圧プラズマ処理の組み合わせによる塗装前処理プロセスの研究

各塗装前処理が耐食性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を実施した。結果、微粒子ピーニング処理と大気圧プラズマ処理の複合処理は、耐食性を向上させる方法として、有効である可能性が示唆された。

研究助成成果報告内容〔東京〕

田邉 匡生東北大学 大学院工学研究科 知能デバイス材料学専攻 准教授

テラヘルツ光による被覆PC鋼線劣化の非破壊・非接触診断

人体に安全である「テラヘルツ光」は光と電波の特長を併せ持ち、被覆PC鋼線内部の断線や酸化状態だけでなく、被覆樹脂の化学劣化も非破壊で診断できる。健全度ならびに寿命の評価を可能とする非破壊検査技術としての原理と実例を紹介した。

細井 厚志早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 機械科学・航空学科 准教授

海洋構造用CFRPの海水環境疲労寿命評価技術の構築

長期海水浸漬におけるCFRP積層板の劣化挙動評価及び劣化メカニズムの解明、寿命予測を行うことを目的とした。海水浸漬による繊維/樹脂界面の劣化によって界面強度が低下し、CFRP積層板の疲労強度低下が生じることが示された。

(敬称略)

懇親会

講演会終了後、スガ試験機㈱主催の懇親会を開催致しました。 講師の先生方のご挨拶と東京はスガ試験機㈱須賀茂雄社長、大阪はスガ試験機㈱田代次郎営業本部副本部長の乾杯発声の後、講師の先生方を囲みにぎやかな会となりました。

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