第74回 スガウェザリング学術講演会

新型コロナウイルス感染拡大以降Web開催に切り替えていた講演会は、4年ぶりの会場での開催となりました。今回も様々な業界の方々を講師にお招きし、会場とWebあわせ約300名の方々にご参加頂き、盛会でした。ご聴講頂いた皆様、講師の先生方、並びに財団役員をはじめご尽力頂きました多くの皆様に厚く感謝し、深く御礼申し上げます。これからもウェザリング技術にたずさわる皆様のお役に立つ情報を発信し続けて参りますので、ご支援の程よろしくお願い致します。

 

  講演会の風景

 

開催日時 2023年11月22日(水)  10:30~16:20
場所 野村コンファレンスプラザ日本橋 6階大ホール
(会場+Webライブ配信)
テ ー マ 新しい視点から挑戦するウェザリング研究
後 援 文部科学省
協 賛 (一社)軽金属製品協会(公社)高分子学会(一社)色材協会
ステンレス協会(一社)繊維学会
(一財)日本ウエザリングテストセンター(一社)日本鋼構造協会
(一社)日本ゴム協会(一社)日本塗料工業会 
日本プラスチック工業連盟(一社)表面技術協会
(公社)腐食防食学会 スガ試験機㈱
主 催 (公財)スガウェザリング技術振興財団
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開会のご挨拶

須賀茂雄スガウェザリング技術振興財団 
理事長 

本日はお忙しい中、ご参加頂き、誠にありがとうございます。 今回の講演会は、実に4年ぶりの対面開催となります。久々に皆様とこうしてお会いでき、大変うれしい限りです。本日はWeb配信をしておりまして、Web参加登録者は220名を数えております。さて本日は、当財団のスガウェザリング財団賞を受賞された方々に、その研究の成果をご講演いただきます。さらに特別講演として、奈良大学の今津学長をお招きしております。(中略)
今津学長をはじめ、本日ご講演頂く方々に共通する点がございます。それは、いずれも“従来の手法にとらわれずに新しい視点から新たなウェザリング研究を実践されている方々”であります。ですので、今回の講演会のテーマを「新しい視点から挑戦するウェザリング研究」とさせて頂きました。普段なかなか聞けない内容ですので、私も今日一日しっかり学びたいと思います。
本日の講演会が、皆様の更なるウェザリング研究推進の糧となり、新しい視点を得るきっかけとなることを願い、私の開会の挨拶とさせて頂きます。

講演内容

土井 康太郎 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 構造材料研究センター

高酸素反応促進技術によるインフラ構造材料の腐食機構解明と耐食性向上
(第 41 回スガウェザリング財団賞表彰 科学技術奨励賞)

コンクリート内の鉄筋の腐食は溶存酸素の還元反応によって律速される。我々は、溶存酸素の還元反応を促進させ、腐食加速および耐食性向上のための表面処理を可能にする技術(高酸素反応促進技術)を開発した。本講演では、高酸素反応促進技術の概要と、本技術を用いて明らかにしたコンクリート中鉄筋腐食機構ならびに亜鉛めっきの耐食酸化皮膜の成長機構、ステンレス鋼の 不働態皮膜厚さと耐食性の関係について報告した。

若月 薫  信州大学 (併任 防護服研究センター)

防火服に用いられる m-アラミド/p-アラミド混紡糸の紫外線下における引張強さと劣化係数の定量的評価・織物データとの相関性
(第38回スガウェザリング財団賞表彰 科学技術奨励賞)

本研究は防火服生地に用いるアラミド紡績糸と織物の紫外線ばく露エネルギーに対する引張強度低下を調べるものである。m-Aramid/p-Aramid の混紡率に着目し、任意の紫外線ばく露エネルギーから引 張強度を算出する数式モデルを求めた。糸と織物の紫外線に対する引張強度の劣化係数を比較し、その相関から予測手法を確立することにより、時間的・費用的に低コストで高性能織物の設計・ 劣化予測を効率的に進められる。

今津 節生  奈良大学

元寇沈没船の保存と劣化防止に挑むトレハロースを使った保存方法(特別講演)

海底から発見される沈没船は“海のタイムカプセル”と言われる。日本でも長崎県松浦市鷹島海底から元寇の沈没船が発見されている。鷹島は 4400 の軍船、14 万人のモンゴル軍が一夜にして崩壊した弘安の役(1281 年)の終焉の地である。沈没船の保存はヨーロッパで発展したが、保存期間の長期化、膨大な費用、保存処理後の劣化などの問題を抱えている。私達は、安全で環境にも優しいトレハロースを使い、沈没船の保存に挑戦し、世界に向けて普及活動を行っている。

板垣 昌幸 東京理科大学

コンクリートの鉄筋腐食環境モニタリング法の開発と適用
(第 41 回スガウェザリング財団賞表彰 科学技術賞)

電気化学インピーダンス法を原理としたコンクリート内腐食環境に対する迅速・高感度分析法を開発した。鉄筋と同材料の電極で構成される電気化学センサーによりコンクリート抵抗と鉄筋の電荷移動抵抗を求めることが可能であり,実用的なウェザリング評価技術として、高速道路・ 鉄道・橋梁での腐食環境モニタリングに応用した。さらに、本技術を用いた腐食環境モニタリン グにより、鉄筋の腐食機構に関する一連の研究を実施した。

藤井 朋之  静岡大学

金属材料における応力腐食割れに関する数値解析的および実験的研究
(第39回スガウェザリング財団賞表彰 科学技術奨励賞、第41回スガウェザリング財団 研究助成)

応力腐食割れ(SCC)は材料・環境・応力の特定の条件で局部腐食:き裂が発生する現象である。SCC は様々な合金で生じることが知られているが、特にステンレス鋼のような高耐食性金属で問題となっている。本講演では、本研究室で提案しているステンレス鋼 SUS304 に発生する SCC の 寿命評価法であるモンテカルロ・シミュレーションについて概説した。次に、近年実施しているアルミニウム合金における SCC き裂発生に関する検討についても紹介した。

喜多 英雄 スガ試験機株式会社

プラスチックの白色 LED 光とキセノン光による促進耐光性試験の比較

現在、屋内照明には、広く白色 LED 光が用いられ、印刷物や、壁紙や電化製品などのプラスチック製品が白色 LED 光に曝されている。白色 LED は、紫外放射がなく、一般的には、耐光劣化を引き起こさないと考えられていたが、実際には、劣化が発生した。そのため印刷やプラスチックの分野で白色 LED 光源による促進耐光性試験の規格化が進められている。今回、一般的な屋内の促進耐光性試験方法である窓ガラス越しのキセノン光源との違いを確認するため白色 LED 光源と比較試験を行った。

閉会のご挨拶

伊藤 叡スガウェザリング技術振興財団 
評議員 

講演会の最後に伊藤叡評議員より閉会のご挨拶がありました。今回の講演会のテーマ「新しい視点から挑戦するウェザリング研究」と結びつけて、講師一人一人の“新しい視点”について解説し、様々な挑戦をしウェザリング研究を進めていくことの重要性を説きました。

(敬称略)

技術交流会

講演会終了後、スガ試験機㈱主催の技術交流会を開催致しました。 講師の先生方のご挨拶とスガ試験機㈱須賀茂雄社長の乾杯発声の後、講師の先生方を囲みにぎやかな会となりました。

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